U-25向けワークショップ「MOYAMOYA to AGENDA」第1回開催レポート

Press Release
2026.05.21

2026年2⽉27⽇、蟹江研究会ビヨンドSDGs Youthグループ(代表:児⽟英⾥ 慶應義塾⼤学 総合政策学部4年)が主催するU-25向けワークショップ「MOYAMOYA to AGENDA ― 違和感から、SDGsの次を考える ―」が、City Lab TOKYOにて開催されました。

第1回となる今回は、サステナビリティに関連する⼤学研究室やサークルの所属者、および同分野で活動するU-25の社会⼈が参加。また、ゲストとして、慶應義塾⼤学教授の蟹江憲史⽒、SDGs17ゴールの⽇本語訳を⼿がけられた博報堂フェローの川廷昌弘⽒をお招きしました。若者が抱く違和感(=MOYAMOYA)を起点に、SDGsが⼗分に扱えていない問いや課題を浮かび上がらせ、ビヨンドSDGsに向けた前向きな議論を展開していきました。

開催の趣旨

SDGsの達成期限である2030年が近づくなか、国連ではビヨンドSDGsに向けた議論が2027年に始まろうとしています。しかし今、未来を明るく描ける⼈はどれだけいるのでしょうか。⽇本においてSDGsは広く認知され、⼀定の成果を上げてきた⼀⽅で、形式的な取り組みにとどまっているのではないか、という疑問の声も多くあります。また、近年は若者の声が重要視される⼀⽅で、SDGsの議論においては知識量や専⾨性が求められるイメージを抱かれていることが、若者を⼗分に巻き込めていない原因の1つだと考えられます。

それらの現状をふまえ、本イベントでは知識量や専⾨性を問わず、誰もが気負うことなく発⾔できる場づくりを重視しました。本イベントのキーワードとなっている「MOYAMOYA」は、⽇常⽣活や社会に対して抱く、曖昧で⾔葉になりきらない感覚や引っかかりを指します。そうした⼀⼈ひとりの内⾯にあるMOYAMOYAを可視化し、他者との対話を通じて⾔語化・深化させることで、社会的なアジェンダへと昇華させるプロセスを設計しました。こうしたプロセスは、既存のサステナビリティ関連イベントの多くにありがちな「規範的・表層的な話に収束しやすい」という課題を払拭し、新たな問いや価値創出の出発点を⽣むきっかけとなりました。

当日の内容

ワークショップ

イベント前半には、参加者⾃⾝が⽇頃感じているMOYAMOYAを起点に、以下の3つのステップで議論を深めるワークショップを⾏いました。

1. ⽣活のなかで感じたサステナビリティに関連するMOYAMOYAを記⼊(個⼈ワーク)
2. 「なぜそれを感じたのか」「誰が関わっているのか」といった切り⼝でMOYAMOYAを分析(個⼈ワーク)
3. それぞれのMOYAMOYAを共有しながらディスカッション(グループワーク)

最後には、各グループからさまざまな視点で、ディスカッションの結果が発表されました。

グループ1:⼈類には愛が⾜りない
このグループでは、「SDGsは認知されているけど浸透していない」「地⽅創⽣の重要性は知られているけど、アクションに移している⼈は少ない」「企業のサステナビリティ活動のゴールが認証を取ることになっている」といったMOYAMOYAが挙げられました。それらの課題から導き出されたのが、「⼈類には愛が⾜りない」という共通項です。地⽅創⽣や地域に根ざした活動をしている企業は、ゆかりのある⼟地への感謝やリスペクトがあり、その場所で⾃分たちが活動することに意味があるという考えのもとプロジェクトを⾏い、そこにファンがつくことで事業が前向きに進んでいます。ビヨンド SDGs を迎えるにあたり、もう⼀度この気持ちを⼈類に何かしらの形で呼び起こすことができれば、MOYAMOYAは⾃然に解消されていく、という仮説が⽣まれました。

グループ2:SDGsをどう捉えるか
このグループでは、「資本主義とサステナビリティの両⽴可能性」「⽬標を達成した後の社会」「情報過多による若者の不安」などのMOYAMOYAを中⼼として、SDGsをどう捉え直すかについて議論が交わされました。SNSの発展により⼈々はさまざまな情報を⼊⼿できるようになり、多様な社会課題が可視化されました。⼀⽅で、情報過多により社会課題が他⼈事の話に終わってしまうという現状があります。企業活動においては、営利活動とサステナビリティの両⽴が難しく、サステナビリティ推進が表⾯的な戦略に終わってしまうという意⾒が挙げられました。そこで、今後の検討課題(アジェンダ)としては「社会課題を⾃分ごととして捉えるための仕組みづくり」「経済合理性と社会的意義を両⽴させる⽅法の検討」「組織内での理念共有の具体的な⼿法の整理」に着地しました。

グループ3:本質を問い、「⼈」と向き合う
このグループでは、「サステナビリティと利益追求の両⽴」「現⾏制度のサステナビリティ」「学び⽅のサステナビリティ」に対するMOYAMOYAが共有され、SDGsの根本を問い直すような「そもそも論」を中⼼とした議論が⾏われました。MOYAMOYAの明確化には及ばなかったものの、SDGsや社会課題に対する違和感を整理し、それらの本質を捉える視点を得る機会となりました。SDGsにおける⼿段と⽬的の関係性や組織のあり⽅、ユースの声などの議論を通して、SDGsを単なる⽬標として捉えるのではなく、「⼈」に向き合いながらその背景や本質を問い直すことが、MOYAMOYAに向き合う第⼀歩であり、ビヨンド SDGsを考えるうえで必要なことだという考えが⽣まれました。

トークセッション

ワークショップの全体共有を終え、イベントの後半では、ゲストである蟹江⽒と川廷⽒からビヨンドSDGsに対する考えやユース世代に求めるアクションについてお話しいただきました。

「2030年以降が“本丸”である」
蟹江 憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)

SDGsが始まる当初から国連の議論に参加していた私は、議論が始まった2011年頃から既に2030年以降の世界を⾒据えていました。SDGsが採択された当時はほとんどの⼈が知らない状況でしたが、今や世間の多くの⼈たちに知られている国際⽬標となっています。私は、SDGsを超えた次なる国際⽬標は、間違いなく「⾃分たちの⽬標」にできると確信しています。今回のイベントのように、「こういうことをやりたい」という⼈が増え、いろんなところで次々とアクションが起こり、ムーブメントのように広がっていくことを期待しています。
昨今、地球上のさまざまなところで分断が起こっているなか、重要になるのが「関係を⼤事にする」ことです。本⽇のディスカッションにおいても「愛」に関する話が出ましたが、これはつまり、丁寧にコミュニケーションをとりながら進めることの⼤切さを意味します。ビヨンドSDGsは、「ビヨンドボーダー」ということでもありますが、それを阻む要因の1つが現在の縦割り社会です。それぞれのポジションを超えて、その姿勢の変容を少しずつ促していく必要があります。⼀⽅で、そのプロセスに時間をかけすぎると、やるべきことを消化しきれないという問題も⽣じます。丁寧なコミュニケーションと、前に進めていく動きをどう両⽴していくのかを考えなければいけません。
若い⽅々には「これ本当にできるのかな?」と躊躇するのではなく、「こんなことがやりたい」という気持ちをどんどん⼤⼈にぶつけて、社会⼈を使い倒してもらいたいです。全国各地のそれぞれのフィールドで、「⾃分はこういうことをやる」と⾔って進めていけば、世の中が動き始めるのではないでしょうか。

⼀⼈ひとりに向き合うビヨンド
川廷 昌弘(慶應義塾⼤学 特任教授)

ビヨンド SDGsには、「⾃分ごと化」が重要です。SDGsアイコンを制作した当時の⽬的は、⼩難しく国際問題を掲げるのではなく、⼀⼈ひとりの⾝近な暮らしからも問題意識を得られることに気づいてもらうことでした。しかし、そうして間⼝を広げるということは、詳しいことは分からないままであることの裏返しです。両⽅を同時に達成することは難しいので、まずは間⼝を広げることから考えました。その結果、SDGsは良くも悪くもムーブメントのように広がりました。
そして次に重要になるのは、ムーブメントによって広がったSDGsをどう⾃分ごと化し、本質的なアクションにつなげるか、ということです。そのためには、今までの活動によって⽣まれた問題意識やその解決策、アイデアや知⾒が必要です。また、今回の議論で出たように、⼈間味のある議論をして、組織や社会を構成する⼈(個⼈)のMOYAMOYAに向き合うことで、進むべき⽅向が⾒えてきます。
ユース世代の皆さんに伝えたいメッセージ、それは「⾃分が気づいたことに責任を持ち、まず⾃分が⾏動する『フロンティアスピリッツ』を⼤事にしてほしい」ということです。悩んでモヤモヤした⼈には、答えがなくてもいいから⾔葉に出してほしいです。メディアやエンタメ界も、ビヨンド SDGsに関⼼を⽰しています。ユース世代には、仲間になってくれる⼤⼈たちを巻き込んで、少しずつみんなで⼀緒に階段を上がっていってほしいと思います。そこで⽣まれたいろんなものを預かっていくのが、ビヨンドSDGs官⺠会議です。世界中で最もSDGsを認知している国の国⺠から出た⾔葉が、次なる国際⽬標のメッセージとして埋め込まれていく。これからは、⼈と違うからこそ、⾔葉にする必要があります。そして、それを受け取る場を、我々でつくっていきたいと思います。

主催者の想い

本イベントを通して、内⾯にあるMOYAMOYAという複雑なものを含んだ感覚に焦点を当てることで、背景にある課題や思いへの理解が深まり、参加者⼀⼈ひとりの思考が整理されました。

⼼理学の分野では、まだ⾔葉にならないような、からだで感じられる微妙な感覚を「フェルトセンス」と呼びます。そして、その感覚に注意を向け、言葉にしていく作業を「フォーカシング」と呼びます。フォーカシングは⼼理療法の⽂脈で使⽤されてきましたが、現在はその枠組みを超え、⾃⼰理解や問題解決のための実践的なツールとして広く使⽤されています。本イベントで⾏った、MOYAMOYAを記⼊し、分析、ディスカッションするプロセスはまさにフォーカシングだと⾔えます。イベントのなかで⼤切にしていた、間違ってもいいし机上の空論でもいい、けれども⼝に出す、ということが、参加者の⾃⼰理解を深めていたと考えられます。

トークセッションにおいて川廷⽒は「モヤモヤしたことを何でもいいから、答えがなくてもいいから⾔葉を出してほしい」と仰っていました。「誰⼀⼈取り残さない」というSDGs の理念を実現するために、⼀⼈ひとりがMOYAMOYAを⾔葉に出すことで、より良いビヨンド SDGsの議論につなげられると、我々は考えています。この過程を経た若者には、問いの⼒がつきます。若者の間で⾔語化された問いを、次は官⺠会議に提起することで、2027年の国連の議論の場において、より国⺠視点の提⾔が可能になります。それが国際アジェンダに反映されることで、より良い⽬標、かつユースも理解しやすい納得のいく⽬標がつくられます。このプロセスにおける若者の存在意義は、単に新たな視点の提供元となるだけでなく、既存の枠組みでは⾒過ごされてきた違和感や⽭盾を可視化し「問いかけ続ける主体」として機能することにあります。だからこそ我々は、本イベントを通じてMOYAMOYAを問いに昇華することにこだわりました。

以上をふまえ、ビヨンド SDGsには「意味のある⾃分ごと化」が必要であると考えます。SDGsは間⼝を広げたことで⾼い認知度を獲得した⼀⽅で、良くも悪くもムーブメント的に広がりました。その結果、具体的な内容の理解や実⽣活との関連を実感しにくいという課題が残りました。この課題を克服するには、⼀⼈ひとりが当事者意識を持つ必要があります。我々が本イベントを開催した理由は、まさにそこにあります。先述したMOYAMOYAが問いに昇華されるプロセスを通して、誰もが⾃⾝の違和感を社会の共通アジェンダへと変換し、次なる国際⽬標の策定にボトムアップで参画できる「場と仕組み」を提供することが、我々が提供し続けていきたい価値です。そして、より良いビヨンド SDGsの議論をつくり出すための、確かな⼀歩になると考えています。