【第3回ビヨンドSDGs官民会議フォーラム】分科会サマリー|分科会3「持続可能な食料システムと健康的な栄養パターン」

分科会3では、「持続可能な食料システムと健康的な栄養パターン」をテーマに、生産者団体、協同組合、企業、自治体、NPO、研究機関など、多様な分野の実務者・有識者が参加し、食を切り口とした持続可能な社会の実現について議論を行いました。分科会では、前回までの議論を踏まえながら、食料システムが抱える課題を整理するとともに、2030年以降のビヨンドSDGs時代に向けて、どのような社会を目指すべきかについて意見交換が行われました。
国際社会が求める「食料システム」の転換
冒頭では、持続可能な食料システムと健康的な栄養パターンに関する国際的な動向が共有されました。国連や国際連合食糧農業機関(FAO)では、持続可能で健康的な食事とは、単に栄養バランスが良いだけではなく、環境への負荷が少なく、安全で、誰もが入手しやすく、手頃な価格で継続的に利用できるものであると整理されています。また、世界では栄養不足と過栄養が同時に存在する「栄養の二重負荷」が深刻化しているほか、農業・食料システムが世界の温室効果ガス排出の約2~3割を占めること、食料価格の高騰や不公正な貿易構造が小規模農家や貧困層に大きな影響を与えていることなどが紹介されました。こうした課題は、従来型の政策の延長では解決できず、食料システム全体を転換する必要があるという国際的な認識が共有されました。
「バリューチェーン」から「食料システム」へ
議論では、まず「バリューチェーン」から「食料システム」への発想の転換が重要なテーマとなりました。参加者からは、食を一方向の流れとして捉える「バリューチェーン」ではなく、生産・加工・流通・消費・廃棄に加え、自然環境、地域社会、教育、文化、人々のつながりまでを含めた「食料システム」として捉えるべきとの意見が相次ぎました。食は本来、地域の暮らしや相互扶助の中で育まれてきたものであり、商品としてだけではなく、人々の命や地域社会を支える基盤として位置づける必要があることが確認されました。
環境・農業・地域を一体で考える
環境と農業の持続可能性についても活発な議論が行われました。地産地消や国産比率の向上は環境負荷の低減につながる一方、日本の農業は小規模経営や気候条件などの制約から有機農業の拡大が容易ではないこと、海外では大規模農業による農薬汚染や水質汚染が深刻化していることなどが紹介されました。さらに、フードテックなどの技術革新によって環境負荷を抑えながら生産性を高める可能性や、国内農業を維持・発展させることが世界全体の環境負荷低減にもつながるとの視点も示されました。あわせて、規格外農産物の発生や過剰包装、消費者の過度な品質要求など、食料システム全体で共有すべき課題についても意見が交わされました。
「食べる権利」を中心に据えた社会へ
「誰一人取り残されない健康的な栄養へのアクセス」をめぐる議論では、「支援する側」の視点ではなく、「すべての人が健康的な食を継続的に選び、食べる権利が保障される社会」を目指すべきとの考え方が示されました。健康的な食を継続して届けるためには、環境問題や水資源、海洋汚染など食料システム全体の課題を解決することが不可欠であり、教育や生産者と消費者のコミュニケーションも重要な役割を果たします。また、子ども食堂やフードバンクの取り組みについても、「施し」ではなく「権利」の視点で捉えるべきということや、子ども自身が食を選択できる環境づくりの重要性などが提起されました。さらに、学校給食や家庭科教育の価値、高齢者や単身世帯の食へのアクセス、地域の外食や交流の場づくりなど、多様な視点から食とウェルビーイングの関係が議論されました。
ビヨンドSDGsに向けた新たな目標と実装
ビヨンドSDGsに向けた将来像については、2040年を一つの重要な節目としつつ、2050年を見据えた長期的な食料システムの転換について意見が交わされました。目標としては、「すべての人に健康的な食を継続的に届けること」を中心に据え、その実現に向けて健康寿命や栄養状態、ウェルビーイングなどを指標として活用することが提案されました。また、食料システムは国の政策だけでなく、企業の事業活動や市民一人ひとりの選択によっても大きく左右されることから、多様な主体が役割を分担しながら協働する新たなガバナンスの構築が必要であることが確認されました。さらに、食育についても子どもだけでなく大人への学びを重視するとともに、「食物連鎖」ではなく「食物網」という考え方に象徴されるように、多様なつながりを理解し、食を通じて人と人、人と地域、さらには世界とのつながりを実感できる教育の重要性が共有されました。
「『食』からSDGsを動かす」
本分科会を通じて明らかになったのは、「食」は農業政策や栄養政策だけのテーマではなく、人々の健康、環境、地域社会、経済、教育、文化、さらには平和や人権にもつながる社会の基盤であるということです。また食料システムは、SDGs17の目標のほぼすべてに影響を与えるものであり、持続可能な食料システムへの転換は、SDGs全体を同時に前進させる効果的なアプローチです。その成否は、国や自治体だけでなく、生産者、消費者、企業、協同組合、教育機関、市民社会など、多様な主体が連携して行動できるかどうかにかかっています。本分科会は、その方向性を共有する重要な議論の場となりました。