3rd Public Private Forum on Beyond SDGs: Forum Report 【Keynote Speech】

Report
2026.08.31

「第3回ビヨンドSDGs官民会議フォーラム」の基調講演では、ビヨンドSDGs官民会議の理事長で慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授の蟹江憲史氏が、国連の報告書などを基にSDGsの進捗状況を紹介しました。さらにビヨンドSDGs官民会議設立の背景を振り返り、2030年以降の国際目標に向けて、地政学的動向、地域からのボトムアップ、システム対応という3つの観点から、今後の議論のポイントを示しました。また、一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)の芥田真理子氏は、休眠預金を活用した民間公益活動支援の仕組みと実績を紹介し、1600超の団体が行う地域発の取り組みが、ビヨンドSDGsにつながる可能性にふれました。

ビヨンドSDGs官民会議の活動、今後の展開について
蟹江 憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授/ビヨンドSDGs官民会議 理事長)

ビヨンドSDGs官民会議フォーラムも、3回目を迎えました。ビヨンドSDGsは大きなチャンスだと思っています。世界にはピンチの状況がいろいろありますが、それをいかにチャンスに変えていくか。それには、みなさんの知恵と対話の力が重要な役割を果たすと考えています。
私は本フォーラム前日までドイツで行われていたサステナビリティ会議に参加していましたが、非常に熱気が高く、ビジネス関係者も多数参加していました。世界的にもポスト2030アジェンダの議論が始まっています。会議では、SDGsの延長線上に「SDG2.0」を考えるべきではないという意見と、SDGsの枠組みを守りながら進めるべきという意見の両方がありました。両極端に見えますが、SDGsが積み上げてきたものを踏まえ、どう発展的に先を考えるかという点では共通していると感じます。日本においてこれまで私たちが行ってきたような対話のプロセスをビヨンドSDGs官民会議のモデルとして、ヨーロッパやアジアの国々も学ぼうとし始めています。
国連事務総長の進捗報告では、SDGsの達成率は昨年の35%から36%に上昇しました。このペースなら2030年に40%到達の可能性があり、研究では4割程度の意識変化が社会変革の契機になるともいわれています。一方で、依然として10人に1人が極度の貧困状態にあり、戦争の影響で悪化している面もあります。先週発表されたSDG指数で日本は20位でした。点数自体は81.0と上昇していますが、他国の伸びにより順位は下がっています。G7で見るとドイツが5位、フランスが7位、イギリスが8位で、洋上風力発電などの取り組みの差を実感しました。
ビヨンドSDGs官民会議を立ち上げた背景には、2つの要因があります。1つは2024年9月の国連総会で採択された「未来のための協定」で、2027年の国連SDGサミット(2015年以降、4年に1度開催)において、ポスト2030アジェンダの国際交渉が始まるとされたことです。SDGs策定時の国際交渉でも、初年度はキャパシティビルディングに充てられたことを踏まえると、2027年からの交渉開始に向けた準備が重要になります。
もう1つは昨年の大阪・関西万博です。私もテーマウィークに関わりましたが、多様な人々が対話を通じて多様な未来を描いた一つの成功例であり、最終週にはビヨンドSDGsがテーマとなりました。そのレガシーを引き継ぐのがこのビヨンドSDGs官民会議であり、来年の「GREEN×EXPO 2027(国際園芸博覧会)」にもつなげる役割を担っています。
第1回のビヨンドSDGs官民会議フォーラムは万博会場近くで130名、今年2月の第2回では150名が参加し、活発な議論が行われました。来週の国連ハイレベル政治フォーラムでも対話イベントを行う予定です。
SDGs策定時は「アウトサイド・イン」(社会課題を企業に取り込む)が中心でしたが、これからは「インサイド・アウト」(企業の社会的取り組みをグローバルに広げる)が日本企業にとっての大きなチャンスだと考えています。AI時代の効率化でも、シナジー強化やトレードオフ解消に活用できる局面が増えています。
本日の議論のヒントとして3点挙げたいと思います。第1に地政学的動向です。短期的合意が困難な今こそ、気候変動や生物多様性に関する課題解決の歴史に学び、短期的な反動を乗り越える手段としての長期的なビジョン共有を目指すべきだと考えます。第2にボトムアップです。地方創生SDGsや先住民の知識に見られるように、身近な実践の中にこそ課題解決のヒントがあります。第3にシステム対応です。食品ロス削減のように、シナジーを生みトレードオフを避ける取り組みは現場に多く存在します。
エビデンスに基づき、否定せずポジティブに議論を重ねていただければと思います。今回のフォーラムを今後の議論に向けた転機と位置づけ、本年12月や来年の会議、さらには政府や国連への提案へとつなげていきたいと考えています。

全国のビヨンドSDGsに向けた個別活動への支援について
芥田 真理子(一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)企画広報部 部長)

一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)は、休眠預金等活用法に基づく指定活用団体として2018年に経団連主導で設立された団体で、2019年より指定活用団体としての活動を開始しました。ビジョンは「誰ひとり取り残さない持続可能な社会作りへの触媒に。」であり、創立当初からSDGsと思いを一にして活動しています。
「休眠預金」とは、10年以上入出金のない預金のことです。10年経過後も預金者は引き出し可能ですが、それでもなお休眠預金として残る金額は年間1500億円程度あります。休眠預金等活用制度は、その一部を民間公益活動に活用する仕組みです。目指す姿は、国や自治体が対応困難な社会課題の解決、民間公益活動の自立した担い手の育成、資金調達環境の整備です。
制度の流れとしては、10年経過した預金が金融機関から預金保険機構に移管され、JANPIAに交付されます。JANPIAは現場団体を直接選ぶのではなく、中間支援組織である資金分配団体・活動支援団体を公募で選定し、その中間支援団体が実行団体(対象団体)を公募・選定します。支援形態は助成事業、出資事業、そして伴走支援であり、透明性・説明責任の観点から社会的インパクト評価も実施しています。
優先的に解決すべき社会課題として、子ども・若者への支援、日常生活に困難を有する者への支援、困難な状況に直面している地域への支援という3つの柱があり、SDGsとの親和性が非常に高いものとなっています。
現在の実績は、助成・出資事業を合わせて269事業、支援団体は最新で1600事業、金額は419億円です。法人格はNPO法人が多いものの多様な団体が活用しており、横断的テーマとしては人権関連が多く、不登校・引きこもり、女性支援、シングルマザー支援、地域コミュニティ、災害支援などが対象となっています。SDGsの目標別では1、4、8、13、17が多く、最も多い目標では233事業に上るものもありますが、17目標すべてに対応した活動が実施されています。
ここで、長野県のNPO法人えんまるの事例をご紹介します。休眠預金等を活用した事業に4回採択されているこの団体は、訪問型病児保育から出発し、活動を通じて母親の孤立や家庭の経済的困窮に気づき、子ども宅食事業を開始しました。食を届けながら関係性を構築するなかで、さらにコミュニティプラットフォーム「えんまるシェ」を展開しています。企業から食品ロスとなり得る商品を提供してもらい、地域で販売し、利益を子ども支援につなげる仕組みで、地域のプロスポーツチームや学校も関わる場となっています。
この取り組みの特徴は、地域の方々が社会貢献のためではなく「お得だから」「楽しいから」参加し、それが結果として子ども支援につながっている点です。企業は食品ロス削減、地域住民はお得な買い物、えんまるは支援財源の確保という三方よしの関係が成立しています。孤立の背景にある人とのつながりの喪失に対し、食やマルシェを通じて関係を回復することを大切にしています。また、食品ロスを「お得な商品」、寄付を「お買い物」、社会貢献を「楽しい活動」と翻訳する伝え方も特徴的です。
こうしたチャレンジは1600を超える団体で全国的に行われており、社会課題解決を再現可能な仕組みにする挑戦が進んでいます。JANPIAはSDGsと目標を一にし、行動や人だけでなく、社会や仕組みそのものを変える、ローカルからのボトムアップによるビヨンドSDGsへの挑戦を後押ししています。ぜひ今後の議論の参考にしていただければと思います。

 

写真:渡 徳博
取材:インプレス・サステナブルラボ「SDGs白書」編集部
グラフィックレコーディング:谷古 清佳(GREAT WORKS)

 

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